モバイルWi-Fiは、建物内ではつながらないという話は、本当でしょうか?
青空の下でもネットがつながるのは、モバイルWi-Fiの最大の魅力ですが、ネットを見るのは自宅やカフェなど建物内がほとんどです。屋内で使えないのでは、モバイルWi-Fiルーターを持つメリットは半減します。
そこで、建物内でつながりにくいと言われる理由や、建物の中でもちゃんと通信できるモバイルWi-Fiはどれか、調べてみました。
WiMAXが建物内でつながらないのは本当?
WiMAX 2+は確かに高速だけど、建物内、地下、高いビルの近くでは、つながりにくいという口コミがネット上に多くあります。実際にWiMAXのルーターを使うと、建物や地下に入った途端、アンテナの数がみるみるうちに減っていくことがあります。
どうして、このようなことが起こるのでしょうか?
これは、WiMAX 2+が利用している回線の周波数帯が関係しています。
周波数帯とは?
LTEや3G回線は、周波数を使った通信を行っています。
周波数というのは、1秒間に繰り返される電波の数のことで、Hz(ヘルツ)、MHz(メガヘルツ)、GHz(ギガヘルツ)という単位で表します。
60Hzとは、1秒間に60回(山と波セットで)、電波が方向転換を繰り返すことです。
1MHzだと1秒間に100万回、1GHzだと実に10億回、電波が振子運動を繰り返していることになります。
モバイルWi-Fiやスマホは、700MHz~2.5GHzの周波数帯を使っています。各キャリアが持っている周波数帯は、総務省によって割り当てられています。
現在、使われている周波数帯状況を整理しました。
周波数帯 | 700MHz | 800MHz | 900MHz | 1.5GHz | 1.7GHz | 2.1GHz | 2.5GHz |
---|---|---|---|---|---|---|---|
ドコモ | ● | ○ | ○ | ○ | |||
au | ● | ○ | ○ | ○ | |||
UQ WiMAX | WiMAX WiMAX 2+ |
||||||
ソフトバンク Yahoo!Wi-Fi Y!mobile |
● | ○ | ○ | ○ | AXGP |
●:3G ○:LTE
WiMAX、WiMAX 2+の周波数帯に注目すると、最も高い「2.5GHz」であることが分かります。
この高い周波数帯が、屋内でつながりにくいことと大きく関係しています。
高周波数が建物内でつながりにくい理由
データ通信では、電波の周波数が高ければ高いほど直進性が強くなり、通信速度が速くなります。また、1秒間に送られるデータ量も多くなります。高速で大容量のデータを送信できるのはメリットですが、問題は、直進性が高いことです。
直進性が高いというのは、電波が屈折することなく、真っ直ぐに届くということです。衛星への通信では、大気圏を突き抜けることができる、直進性の強い電波が使われます。
しかし、「真っ直ぐに進むのが得意」というのは、言い換えると、「障害物を避けながら電波を送るのが苦手」ということです。そのような性質から、高周波数帯の電波は建物内や大きなビルの近くといった場所では、電波が障害物に反射してしまい届きにくくなります。また、雨や雪にも電波が反射して、弱くなる傾向があります。
その点、低周波数は直進性が弱く、障害物があるときに、回り込んで電波が届く性質があるので、建物内でも比較的つながりやすいのです。
さらに、低周波数は電波が遠くまで届きやすいといった特性もあります。つまり、少ない基地局で広範囲に電波を送ることができます。つながりやすいうえ、設備投資が削減できることは、通信キャリアにとってはこの上ない利点です。
700MHz~900MHzの低周波数帯域が、“価値の高い帯域”という意味で、「プラチナバンド」と呼ばれる理由です。ちなみに、プラチナバンドという言葉が定着する前は、「黄金周波数帯」と呼ばれていました。
iPhoneを使って、周波数を確認することができます。
iPhoneの電話アプリ画面に、直接「*3001#12345#*」と入力し、通話ボタンをタップすると、自分が使っている周波数帯が確認できます。興味のある人はやってみてください。
私のiPhoneはバンド番号が「1」だったので、2.1GHzの周波数帯を使用していることになります。
バンド番号 | 周波数 |
---|---|
1 | 2.1GHz |
3 | 1.7GHz |
8 | 900MHz |
18 | 800MHz |
21 | 1.5GHz |
28 | 700MHz |
41 | 2.5GHz |
屋内でもつながるモバイルWi-Fiはどれか?
周波数帯によって、通信状況に違いが出ることが分かったところで、ドコモ、Yahoo!Wi-Fi、Y!mobile、UQ WiMAX(au)の中で、屋内でも強いモバイルWi-Fiはどれか、検証したいと思います。
ドコモ:月額費用は高いが、建物内でも安心して接続できる
ドコモは、2012年にmovaが終了して、空きが出た800MHz帯(プラチナバンド)で、Xi(下り最大50MbpsのLTE)を提供しています。他キャリアと比較すると、月額料金は高めですが、周波数帯域がバランス良く、充実しているのはドコモです。
Yahoo!Wi-Fi、Y!mobile:「プラチナLTE」が使える
旧イー・アクセス(現在はソフトバンクの傘下)の1.7GHz帯も利用できるようになり、LTEで使う周波数帯の数が増えました。プラチナバンドの900MHz帯でも、LTE(下り最大75Mbps)を展開しています。
ソフトバンクでは、「プラチナLTE」と呼んでいます。
「ドコモは、月額料金が高いからちょっと…」と言う人には、Yahoo!Wi-FiかY!mobileがおすすめです。
UQ WiMAX:au回線を併用できるなら
WiMAX、WiMAX 2+は、2.5GHzという高周波帯を利用するため、他キャリアに比べると、建物の中ではややつながりにくいと思われます。別料金になりますが、同じKDDIグループのau回線を併用することで、800MHz帯(プラチナバンド)のLTEが利用できます。屋内でネット利用することが多い人は、検討してみてください。